悪事を働いてきた自分へ

2021年11月16日

これまでの人生、さんざん悪いことや失敗を繰り返してきました。時々、そんな自分を後悔して気分が落ち込むことがあります。そんな時にどうしたら心を元気にできるか、ユング心理学者で臨床心理学者の河合隼雄先生に伺います。

やっぱり神の存在ということは、よほどの悪いことをしないとわからないんだと思うのですね。よいことをしている人は、案外神さまの存在を知らない。自分が偉いと思ってますから、よいことばっかりして、神さまのことなど考えておられない。神に至る道としての悪というか、そういうものをこのころに考えていたのをよく覚えてます。神の存在を知るためには、悪というところを通って行かねばならない。

そのころ新潮社から『世界文学全集』が出てたんです。いろいろ読んだなかで、すごく印象に残っているのが『モンテ・クリスト伯』です。この中にはカドルッスというものすごい悪いやつが出てきます。私はこういうのを読んでいると悪者のほうに同感するんですね。なんとなく「僕に似てるなあ」「うっかりしたら、僕はああいう悪いことをする人間とちゃうかなあ」と思う気持ちはいつもありました。

そのうちにどういうことが起こるかというと、たとえばカドルッスなんていうのは最後の最後の死ぬ寸前に言う言葉が、「ああ、神さま。あなたはおありです」。「神さまはこの世に存在する」ということなんですね。

深層意識への道 (グーテンベルクの森)