欲望の取扱説明書

2021年11月2日

私たちは生きている限り、欲望を捨てることはできません。さらに、一つの欲望がさらにまた次へ次へと欲望を生んでいきます。この欲望と上手に付き合うにはどうしたらよいのでしょうか。

欲望には苦しい欲望と楽しい欲望の2色ある、とおっしゃるヨガの哲人、中村天風先生に伺います。

天風哲学は、積極性をもって人生に生きよという教えであります。だから、欲を捨てろだなんて、そんな消極的な、できないことは大嫌いだ、私は。もっと人生は積極性を発揮して、大いに欲望を炎と燃やせと私はあえて言う。

がしかし、ここで慎重に考えるべき大きな問題が一つあることを忘れちゃいけないんだ、欲を炎と燃やすについちゃ。エイヤっと言って、何でもかまわず炎と燃やしちゃいけないんだよ。欲望にはね、苦しい欲望と、楽しい欲望と、2つあるんだよ。燃やしてりゃ燃やしてるほど苦しい欲望と、燃やしてりゃ燃やしてるほど楽しい欲望と、2色あるんだよ。

叶わない欲望を心に描くと苦しいんだ。参考のために、分析的に種類を分けて考えてみよう。第一が本能の満足。第二が感覚の満足。第三が感情の満足。第四が理性の満足。この四つの欲望には、これでよいという際限がないということ。それがどうしても、往々、苦しい欲望へと変化しちまうんだ。悩んだり、苦しんだりする欲望は、欲望とは言えないと私は思う。欲望の格好をしている、一つの違ったものだと私は言いたいんだ。

本当の欲望というのは楽しい欲望のことなんだ。欲しがりゃ欲しがるほど楽しいのが本当の欲望なんだ。だから、すべからく楽しめる欲望を炎と燃やしなさいと言いたいんであります。欲というものは捨てられないんだから、楽しい欲のほうへ切りかえると、少しも欲に苦しめられないなと、こう感じたんであります。

楽しめる欲望の中で一番尊いものは何だろう。楽しめる欲望で、どんなにしても不満足を感じないで、いつも何ともいえないエクスタシーを感じて、取っ組んでいける欲望というのは、霊性満足を目標とする欲望だ。本能満足や感情満足や感覚満足や理性満足よりも、はるかにやさしいんです。霊性の満足というのは、常にできるだけ自己の言葉や行いで、他人を喜ばせることを目的とする。そうした場合がいちばん人間の本然の姿なの。他人に親切にしてやった、思いやりのあることをしてやった、それが人間の本当の心なんだから、そのときぐらい何ともいえないエクスタシーを感じるときはないのだよ。難しく考えなくていいんですよ。霊性満足という生活法は、いちばん人間としてやりやすい生活なんだ。

盛大な人生 天風シリーズ第2弾