心の奥深くにダイブする方法

2021年11月21日

「モモ」「はてしない物語」の作者であるミヒャエル・エンデ先生。エンデ先生の父親のエトガー・エンデさんは、シュールレアリズムとよばれる抽象的で観念的な絵を描いた画家でした。その描き方は、心の奥にダイブする、といっていいような非常に独特なものでした。エンデ先生に伺います。

「スケッチに行く」というのが合図の言葉だった。

母と私にとり、それは何が起ころうとも邪魔をしてはいけないというサインだった。父はアトリエに閉じこもり、そのうえ大抵はアトリエを真っ暗にして、ソファーに身を横たえ、気を集中させた。意図を全て忘れ、思考をみんな沈黙させ、表象をことごとく消さねばならない。そうして、まったく空だが、一種、より覚めた意識で父は待った。これが一番難しい時だ、と父は話した。というのも、ほんのわずかな不注意や、ほんのわずか<精神の緊張>がゆるむだけで、たちまち普通の日常意識が思考や言葉の渦巻きとともに静けさをやぶるからだ。

絵の内容は父の影響下になかった。つまり、父の想像行為でそれを自由に変えることはできなかった。その絵に父自身が驚嘆することもまれではなかった。

エンデ先生は、父親の絵画の制作方法を自分の制作に用いることを考えました。そして、1983年に発表された「鏡のなかの鏡」は父親のやっていた創作方法をヒントに、父親が絵画で描いた世界を、文学で描いたのです。

エンデの贈りもの